先人が引いた補助線を読み取る
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敷地の文脈にあっていなかった既存住宅
敷地は京都駅から30分ほどの宇治市内に位置する住宅分譲地の角地にあります。幹線道路を1本裏側に入った一画という場所柄、幹線道路が走る東側はやや喧噪的で、西側には長年住宅地として育まれた穏やかな環境が広がるという対照的な状況が相対する場所になっていました。
建替え前の住宅はこの文脈にうまく馴染めずあらゆる窓が閉ざされていたため、この状況を改善するように新たな住宅を計画することを目指しました。
環境に呼応する箱型のボリュームと開口
建物の形状は敷地にあわせて4間×5間の箱形としています。
耐力壁で外周を囲ったボックスを中央の耐力壁で分割し、南側の2層吹き抜けからなるヴォイドと北側で積層させた諸室が対面するシンプルな構成です。
そこに、季節や時間に応じた光の取り込み方、隣家や前面道路との視線や東側の幹線道路からの音の遮断などを考慮して位置や大きさを決めながら開口を空けました。
先人が引いた補助線を読み取る
全ての決定には解体前の既存住宅に対するリサーチが活かされており、建替えとは言え「既存の調査を設計にフィードバックする」という過程を経たこの住宅は、ある意味では再生建築と同じような作業により設計されたといえるかも知れません。
思えばこれだけ国土が開発し尽くされた今の日本では、白紙の大地に線を引く行為よりは、先人が引いた無数の補助線を読み取りそこに新たに手を加えて行く事の方が、はるかに一般的になって行くのではないでしょうか。