渡邉明弘建築設計事務所 [AKI WATANABE ARCHITECTS]

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先人が引いた補助線を読み取る

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Date
2018.12
Summary

30代夫婦のためにつくった住宅。京都駅から30分ほどの宇治市内に位置する住宅地に位置し、幹線道路が走る東側と閑静な住宅街という対照的な状況が相対する環境である。
敷地にあわせた4間×5間の箱形の建物を中央の耐力壁で分割、南側のヴォイドと北側に積層した諸室が対面する構成とした。開口は季節や時間に応じた光の取り込み方、隣家や前面道路との視線や東側の幹線道路からの音の遮断などを考慮して位置や大きさを決めながら空けられている。

Project Point
  1. 建て替え前の既存住宅が敷地の文脈に馴染んでいなかったポイントを丁寧にリサーチ
  2. 周辺環境にあわせて、箱型のヴォリュームを南北で二分 大きなヴォイドからなる南側と諸室が積層する北側が対面する構成
  3. 季節や時間に応じた光の取り込み方、周囲の視線や音などを考慮して空けられた開口

敷地の文脈にあっていなかった既存住宅

敷地は京都駅から30分ほどの宇治市内に位置する住宅分譲地の角地にあります。幹線道路を1本裏側に入った一画という場所柄、幹線道路が走る東側はやや喧噪的で、西側には長年住宅地として育まれた穏やかな環境が広がるという対照的な状況が相対する場所になっていました。
建替え前の住宅はこの文脈にうまく馴染めずあらゆる窓が閉ざされていたため、この状況を改善するように新たな住宅を計画することを目指しました。

配置図と各階平面図。敷地の西側(左側)は生活道路に接道し、東側(右側)は隣地を挟んで幹線道路に面している。

環境に呼応する箱型のボリュームと開口

建物の形状は敷地にあわせて4間×5間の箱形としています。
耐力壁で外周を囲ったボックスを中央の耐力壁で分割し、南側の2層吹き抜けからなるヴォイドと北側で積層させた諸室が対面するシンプルな構成です。
そこに、季節や時間に応じた光の取り込み方、隣家や前面道路との視線や東側の幹線道路からの音の遮断などを考慮して位置や大きさを決めながら開口を空けました。

1階は南側半分を2層吹き抜けのリビング・ダインング・キッチンとした。隣地の視線を避けつつ開けられた開口から、朝日がキッチンに差し込み、日中はリビングが光で満たされる。
視線、音や風、季節や時間に応じた光に応じた空間にんるよう開口を調整した
北側の和室は冬至でも日光が差し込む
ダイニングの高窓と和室の腰窓は、風の通り道になる

先人が引いた補助線を読み取る

全ての決定には解体前の既存住宅に対するリサーチが活かされており、建替えとは言え「既存の調査を設計にフィードバックする」という過程を経たこの住宅は、ある意味では再生建築と同じような作業により設計されたといえるかも知れません。
思えばこれだけ国土が開発し尽くされた今の日本では、白紙の大地に線を引く行為よりは、先人が引いた無数の補助線を読み取りそこに新たに手を加えて行く事の方が、はるかに一般的になって行くのではないでしょうか。

所在地:京都府
主要用途:住宅
構造:木造
規模:地上2階
​延床面積:約110㎡
​撮影:堀田貞男
​掲載:Architizer、ArchiDily、Archello

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