隔離して管理する「施設」ではなく、生き生きと働く場所を
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隔離して管理する「施設」ではなく、生き生きと働く場所を
ハンディキャップのある方が必要な支援を受けながら働く福祉的就労のための就労継続支援B型事業所です。
事業者は「障がいのある方を隔離する箱ではなく自然な社会参加を実現する場所にしたい」というリクエストとともに、渡邉明弘建築設計事務所に貸テナントの内装設計を依頼されました。
私たちは、設計に入る前の、入居できる物件を探すステップから業務を受任しています。インフラや耐震性の状況、バリアフリーや用途変更・営業許可取得といった観点から適切な建物を、オーナーと一緒に探して行き、ある物件に巡り会いました。
開きつつ閉じることで、自分のペースで社会とつながる
入居先のテナントビルは、住宅や工場が点在する地域に位置するテナントビルです。前面道路は通学路としても利用され、地域の方の往来が見られる立地でした。
私たちは、この道路に面して店舗を置くことで、地域の方々と施設を繋ぐ場所にしたいと考えました。
一方で、認可に必要な機能訓練室等の諸室は就労者専用として奥へ配置しています。
こうすることで、就労者が落ち着いて働きながら自分のペースで接客や販売にチャレンジできるようなゾーニングになっています。
秩序と自由さをもたらす、店舗の立体グリッド
店舗天井には木製の立体格子を展開して、施設の道路側からの視認性を高めたり、アルミとガラスから成る建物の印象を和らげたりしています。また、部分的に組む段数を変えて、商品の立体的なディスプレイ計画や動線のきっかけになるようにデザインしています。立体格子のスパンは床材の割り付けと同じ300mmに統一しており、秩序だった内装と自由な人や植物が程よく馴染むことを意図しています。
建物の特徴を引き出して、多様性が尊重される社会へ
多様性が尊重される社会に向け福祉施設の需要が増加する一方で、小規模な施設は予算の低さからビルの一角を借りて許認可に必要な部屋を確保しただけの箱となりがちです。
既存建物のもつ地域との繋がりに着目してデザインする範囲を選択することで、就労者が地域との繋がりを持ちながら人間らしく働き社会参加できるようにと願いを込めました。