渡邉明弘建築設計事務所 [AKI WATANABE ARCHITECTS]

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断面構成のアップデート

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Date
2025.3
Summary

東京都中央区日本橋にある築52年の雑居ビルの再生計画である。新築当時は繊維問屋とオーナー住戸からなる店舗兼用建築であり、その後は飲食店やオフィス、寮の雑居ビルとなっていたが、老朽化や縦動線の特殊性などによりほとんど活用されていなかった。また、旧耐震建物であるにも関わらず一部の耐力壁が撤去されていた。都心の中小規模ビルを再活性化する取り組みを進めている丹青社は、耐震化や意匠・設備の更新を行い新築並の価値を持つセットアップオフィスに再生すべく、私たちのリサーチを経て本物件を取得した。
今回の計画では、店舗・倉庫階にしか通じていなかったエレベーターシャフトを全ての階に貫通させ、占有部と共用部が混在していた直通階段を共用の避難階段として再整理した。耐震化では旧住戸階のスパン中心に耐力壁を挿入し、外観の保存や工事費の削減を可能にするとともに、再生ならではの不思議な立ち姿やワークプレイスを生み出した。1階の飲食店は工事中も営業を継続しながら、ファサードのみを更新した。
※国交省「中小ビルのバリューアップ改修投資の促進に向けたモデル調査事業」 第1期モデル採択

Project Point
  1. 断面構成の一新:5層の店舗と3層のオーナー住戸からなる店舗併用住宅の断面形式を、各階ごとのテナントビルへと再構成
  2. 縦動線の一新:エレベーターシャフトを最上階にまで拡張して、直通階段を避難階段に再整備
  3. 全体最適の耐震化:柱増打を避けスパン中央に耐力壁を建ち上げ、外観を維持しつつ施工費を最適化

機能不全に陥っていた都心のペンシルビル

新築時の図面では地下1階〜地上4階は店舗と倉庫、5〜7階はトリプレックス住戸になっており、当初は繊維問屋とそのオーナー家族が住む家からなる、中高層の店舗併用住宅だったようである。1その後は飲食店、オフィス、寮が入居する雑居ビルとなっていたが、老朽化や縦動線の特殊性などいろいろな問題がありほとんど活用できない状態となっていた。

既存外観

兼用住宅の断面形式をアップデート

今回求められたのは、1階のテナントを退去させることなく、耐震化や内外装・設備・縦動線を一新して持続可能な飲食店・オフィスビルに再生することだった。そこで私たちは、動線計画と構造計画を抜本的に変えることにした。

動線計画では、スラブを解体して地下から最上階までエレベーターシャフトを貫通させた。また、既存の直通階段を共用の避難階段として定義し直した。このようにして「低層階の店舗・倉庫+上層階のトリプレックス住戸」という構成から、各階が独立した構成に再構築した。

スパン中央の耐力壁

耐震補強においては、スパン中央に耐力壁を挿入する計画とした。構造計算上は道路側柱の増し打ち補強がベストだったが、それでは特徴的な外観が損なわれサッシ工事なども付随して発生してしまう。それらを避けた結果、道路側の大きく開いた窓を塞ぐような不思議な壁が建ちあがった。

6階内観 右側が新設した耐力壁 左側は会議室
7階内観

物件取得前のコンサルティング

再生においては、ほとんどのプロジェクトで設計着手前の企画や調査(事業性や実現可能性の検証)が新築やリフォームに比べて複雑になる。なぜなら、既存建物のあらゆる情報を収集・整理して、計画面(意匠・機能性や遵法性)・環境面(設備のスペックや快適性)・構造面(耐震性や耐久性)・施工面(居ながら工事への対応や事業的に成り立つ建設費)といったあらゆる角度から検討しなければならないからだ。

今回のプロジェクトでは、事業者がビル取得を検討するフェイズで、「1階テナントの稼働を止めずに工事できるか」「エレベーターを最上階まで延長できるか」「耐震化にはどの程度の補強が必要と思われるか」「それらを事業が成立する建設費で実現できるか」といった点に対して設計者目線でアドバイスを行った。
スピーディーな意思決定をサポートすべく、事業主の意思決定を左右する点を正確に把握することに注力した。


既存住戸階
既存倉庫階
  1. 前者は在庫を保管する倉庫とできるようにSRC造で、後者はRC造で建てられている。商いの場の上に住まいや倉庫を乗せる形式は古くから見られるが、その中でも江戸時代から繊維問屋街として栄えた東日本橋らしいプログラムと構造体の形式である。 ↩︎

所在地:東京都中央区
主要用途:事務所、飲食店
構造:RC造、SRC造
規模:地上7階 地下1階
企画・設計監理:丹青社+渡邉明弘建築設計事務所
設計協力:EOS Plus、テーテンス事務所
撮影:YASU KOJIMA

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